今日は、よく晴れていて、月曜日だけど、学校もそんなに憂鬱じゃない。ただ、体が食べ物になったら困るので、食欲がないと言って朝ご飯は抜いてきた。自分のクラスに向かって、廊下を歩く。
「ねえ、ゆりちゃんっているでしょ?」木下さんの声が教室の中から聞こえた。
「いるいる。なんか、ちょっと痛い子だよ」また別の声がそれに応える。クラスメイトの子だ。わたしは、教室の中に入ってはいけない気がして、ドアの手前で立ち止まってしまった。
木下さんが、反論するように言う。
「痛い子?面白いじゃん、良い子だよ。先生にいじわるされたとき、なんか魔法~とか言って、私のこと元気づけてくれたんだよ。」
「あはは、あのねえ、それ冗談じゃないから。あの子まじで言ってんだよ。この間、たまたま一緒に帰ったら、通学路でたばこをポイ捨てしたおっさん見て、あの人ビスケットに変えるのーとか言ってて、超びびった。」
「そうなの?どういうこと?」木下さんが怪訝そうに聞き返している。
「もう中一にもなって魔法少女ごっこがやめられないみたい」小さな意地悪を含ませた忍び笑い。わたしは少し誤解されやすいみたい。シュガリースイート・チョコレート。別に気にしない、本当にわたしはミルキィシュガーなんだもの。わたしはそっと教室にはいった。
席に着くと、見慣れた姿がやってきた。安心して、思わず声をかけた。
「みどりちゃん!おはよう!」
小学校のころから仲良くしてくれているみどりちゃんは、ボブカットがかわいい同じ組の女の子だ。
「ねえ、ゆりちゃん、ちょっと話したいことがあるからこっちきて」急にみどりちゃんは真剣な顔をして、わたしの手を引いた。廊下の隅で、みどりちゃんは声をひそめて言った。
「ゆりちゃん、もう、魔法天使ごっこやめなよ。さっき、いろいろ言われてたよ」みどりちゃんは、少し泣きそうな顔で言った。さっきの木下さんとクラスメイトの会話のことだろう。
「魔法天使ごっこ?ごっこじゃないよ」わたしは、心の隅をかじられたように感じた。
「本気で言ってるの?」
「みどりちゃんは信じてくれてなかったの?」
わたしの顔も、今にも泣きそうだろう。
わたしたちは黙りこくって、廊下の隅に立っていた。
「だって、もう中学生なんだよ」みどりちゃんは、くちびるを震わせて言った。
「本当に、自分の魔法で悪者がお菓子になるのが見えるんだもん」わたしはもう、自分の下まつ毛に、まあるく涙が乗っているのがわかっていた。朝礼の始まりを告げるチャイムの音が、やけに大きく聞こえて、心臓が破裂しそうだった。息を吸うと、気道が震えながら押し開かれた。わたしはみどりちゃんに背を向けて、教室に入った。
「ねえ、ゆりちゃんっているでしょ?」木下さんの声が教室の中から聞こえた。
「いるいる。なんか、ちょっと痛い子だよ」また別の声がそれに応える。クラスメイトの子だ。わたしは、教室の中に入ってはいけない気がして、ドアの手前で立ち止まってしまった。
木下さんが、反論するように言う。
「痛い子?面白いじゃん、良い子だよ。先生にいじわるされたとき、なんか魔法~とか言って、私のこと元気づけてくれたんだよ。」
「あはは、あのねえ、それ冗談じゃないから。あの子まじで言ってんだよ。この間、たまたま一緒に帰ったら、通学路でたばこをポイ捨てしたおっさん見て、あの人ビスケットに変えるのーとか言ってて、超びびった。」
「そうなの?どういうこと?」木下さんが怪訝そうに聞き返している。
「もう中一にもなって魔法少女ごっこがやめられないみたい」小さな意地悪を含ませた忍び笑い。わたしは少し誤解されやすいみたい。シュガリースイート・チョコレート。別に気にしない、本当にわたしはミルキィシュガーなんだもの。わたしはそっと教室にはいった。
席に着くと、見慣れた姿がやってきた。安心して、思わず声をかけた。
「みどりちゃん!おはよう!」
小学校のころから仲良くしてくれているみどりちゃんは、ボブカットがかわいい同じ組の女の子だ。
「ねえ、ゆりちゃん、ちょっと話したいことがあるからこっちきて」急にみどりちゃんは真剣な顔をして、わたしの手を引いた。廊下の隅で、みどりちゃんは声をひそめて言った。
「ゆりちゃん、もう、魔法天使ごっこやめなよ。さっき、いろいろ言われてたよ」みどりちゃんは、少し泣きそうな顔で言った。さっきの木下さんとクラスメイトの会話のことだろう。
「魔法天使ごっこ?ごっこじゃないよ」わたしは、心の隅をかじられたように感じた。
「本気で言ってるの?」
「みどりちゃんは信じてくれてなかったの?」
わたしの顔も、今にも泣きそうだろう。
わたしたちは黙りこくって、廊下の隅に立っていた。
「だって、もう中学生なんだよ」みどりちゃんは、くちびるを震わせて言った。
「本当に、自分の魔法で悪者がお菓子になるのが見えるんだもん」わたしはもう、自分の下まつ毛に、まあるく涙が乗っているのがわかっていた。朝礼の始まりを告げるチャイムの音が、やけに大きく聞こえて、心臓が破裂しそうだった。息を吸うと、気道が震えながら押し開かれた。わたしはみどりちゃんに背を向けて、教室に入った。
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性に関する表現を含みます。
うちに帰ってきて、夕飯の前に、お風呂に入ろうと、服を脱いだ。最近、わたしの胸は林檎のように硬く、丸くなってきた。わたしはうつむいて、自分の裸の胸をみていた。悪魔のいたずらだろうか。わたしを食べ物に変えてしまうつもりなのだろうか。わたしはどうなってしまうのだろう。悪魔に負けて、魔法天使失格になってしまうのだろうか。わたしが食べ物を食べたら、悪魔の魔法のせいで、わたしの体は加速的に食べ物になってしまうかも。今日はお夕飯を食べないでおこう。毎日、何も食べないわけにはいかないし、とりあえず、大好きなお菓子はもうやめよう。お昼は学校でパンを買うって嘘をついて、お弁当を持って行かないようにすれば済むし、塾のある日はいつもコンビニでお夕飯を買うから、それをやめよう。朝ご飯は食欲がないって言って、少なめに食べればいい。
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英語の授業中、わたしの隣の席の木下さんがうとうととしていた。肩までのさらさらした黒い髪が、舟をこぐたびにふわふわと揺れる。ちょっとかわいい、わたしは笑いそうになった。先生が目ざとくそれを見つけて、「木下さん」と声をかけた。木下さんは、はっとして顔を上げた。
「ごめんなさい」素直に謝って、シャーペンを握りなおした。
「木下さん、困りますよ。あなたね、そんな寝てばかりいるから成績もぱっとしないんですよ。頭が悪いのは仕方ないけど、ちゃんと授業中くらいおきておいて、誠意を見せなさいよ。そんなことだと、テストの点数だけじゃなくて、授業態度の点もさげますよ」
素直に謝った木下さんに、ぐちぐちと文句をつける先生は意地悪だ。木下さんは困ったように先生のことをじっとみて、もう一度、謝った。ひどいな。わたしは小さな声で、「シュガリースイート・チョコレート」とつぶやいた。先生をシュークリームにしてやったのだ。シュークリームが教壇にぷかぷか浮いて、英語を教えている。変なの、わたしは思わずくくくと笑った。
授業が終わった後、木下さんに「先生のことなんか、気にしちゃダメだよ」と声をかけた。
「ありがと」木下さんは、ちょっと悲しそうに笑って
「ところで、授業中に何か小さな声で言ってたね、そのあと笑ったりして。何してたの?」
「あのね、先生を魔法でシュークリームに変えてやったんだ」
「なにそれ。ゆりちゃんて面白いね」木下さんは、驚いたような、変な顔をして、笑った。
「ごめんなさい」素直に謝って、シャーペンを握りなおした。
「木下さん、困りますよ。あなたね、そんな寝てばかりいるから成績もぱっとしないんですよ。頭が悪いのは仕方ないけど、ちゃんと授業中くらいおきておいて、誠意を見せなさいよ。そんなことだと、テストの点数だけじゃなくて、授業態度の点もさげますよ」
素直に謝った木下さんに、ぐちぐちと文句をつける先生は意地悪だ。木下さんは困ったように先生のことをじっとみて、もう一度、謝った。ひどいな。わたしは小さな声で、「シュガリースイート・チョコレート」とつぶやいた。先生をシュークリームにしてやったのだ。シュークリームが教壇にぷかぷか浮いて、英語を教えている。変なの、わたしは思わずくくくと笑った。
授業が終わった後、木下さんに「先生のことなんか、気にしちゃダメだよ」と声をかけた。
「ありがと」木下さんは、ちょっと悲しそうに笑って
「ところで、授業中に何か小さな声で言ってたね、そのあと笑ったりして。何してたの?」
「あのね、先生を魔法でシュークリームに変えてやったんだ」
「なにそれ。ゆりちゃんて面白いね」木下さんは、驚いたような、変な顔をして、笑った。
わたしは、「マシュマロ・キャンディ・シティ・トーキョー」に住んでいる。もちろん、みんなが使っている名前は「東京都」だから、住所として「マシュマロ・キャンディ・シティ・トーキョー」と書いても、お手紙だって宅配便だって、どこへもたどり着けない。でも、わたしの目に見えるこの街は、まちがいなく、「マシュマロ・キャンディ・シティ・トーキョー」。学校の女の子たちはマシュマロ(女子校だから、学校はマシュマロでいっぱい!)、街明かりは色とりどりのキャンディ。お昼寝をすれば、ゼリービーンズと金平糖が降ってくる夢を見てしまうような、とても素敵な街。
わたしは、朝起きて、中学校へ行って、ちょっと遊んでからお家に帰ってくるという普通の中学一年生の女の子。週に何回かは塾やピアノのお稽古にも行くけど、そこもほかの中学生と同じ。
でも、わたしには一つ普通とは違うところがある。わたしは、当たり前の中学生、宮上百合子から、魔法の天使ミルキィシュガーに変身できるのだ!この、ストロベリー・スワン・ステッキで「シュガリースイート・チョコレート!」と唱えれば、たちまち魔法の天使ミルキィシュガーだ。
わたしが使える魔法は、悪者をお菓子に変える魔法。でも、わたしが変身して活躍している姿は誰にも見えないし、ストロベリー・スワン・ステッキも、頭の中にあるから、わたしにしか見えない。お菓子の姿に変えられた悪者も、みんなには今まで通りの姿に見えるだけ。それは少しさみしいけど、魔法少女ってそういうものでしょ?
わたしは、朝起きて、中学校へ行って、ちょっと遊んでからお家に帰ってくるという普通の中学一年生の女の子。週に何回かは塾やピアノのお稽古にも行くけど、そこもほかの中学生と同じ。
でも、わたしには一つ普通とは違うところがある。わたしは、当たり前の中学生、宮上百合子から、魔法の天使ミルキィシュガーに変身できるのだ!この、ストロベリー・スワン・ステッキで「シュガリースイート・チョコレート!」と唱えれば、たちまち魔法の天使ミルキィシュガーだ。
わたしが使える魔法は、悪者をお菓子に変える魔法。でも、わたしが変身して活躍している姿は誰にも見えないし、ストロベリー・スワン・ステッキも、頭の中にあるから、わたしにしか見えない。お菓子の姿に変えられた悪者も、みんなには今まで通りの姿に見えるだけ。それは少しさみしいけど、魔法少女ってそういうものでしょ?
さみしさは弱火で
絶え間なく燃え続ける
フライパンの上の砂糖水は
キャラメルになって
甘く苦く焦げ付いている
絶え間なく燃え続ける
フライパンの上の砂糖水は
キャラメルになって
甘く苦く焦げ付いている
